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「太陽建築」井山武司著 渡辺菊眞編
¥2,200
パッシブソーラー建築の知る人ぞ知る恐るべき先駆者:井山武司。彼は自身が手がける建築を「SOLARCHIS(太陽原理の建築)」と名付け、その研究を生涯かけて実践的になしとげた。その軌跡と思想が綴られた遺構を、書籍としてまとめあげたものが同著である。太陽のもと、地球のうえに、人が生きること。この根本存在を可能にする場所が太陽建築である。歴史的な太陽建築のレビュー、井山武司の研究軌跡、そこから導いた太陽建築の原理、仮想と実現双方に渡る実践が、簡明につづられる。末尾の講演録を含めて、必読の書。「太陽系地球にたつ建築」のあるべき姿、遠い過去から未来までをつなげることができる建築の原理が、ここに。 「太陽建築」推薦文 森羅万象を味方にする建築哲学 鎌仲ひとみ(映画監督 ぶんぶんフィルムズ代表) 井山先生の遺稿がこの世に出るに際し、井山先生の 建築哲学に新たな光が当てられることをこの上なく 嬉しく、貴重なことだと感じています。 住まい、という観点からエネルギーを見ればほとんど 全てが電気で賄われています。 その電気は、日本においては未だに原子力発電を基幹 電力とし、大量の電力消費に対応する選択肢として これしかないと思い込まされて来ました。 しかし、原発に頼ることのリスクがどのようなものか、すでに 福島での事故を経験した私たちは知っています。 今こそ、化石燃料や原発の電気に頼るのではない建築のあり方、 エネルギーの調達や使い方が求められています。 だからこそ、井山先生の建築哲学が未来に向けて必要不可欠なのです。 井山先生が生涯をかけて追い求めて来たのは、今、地球上に 蔓延している、大量エネルギー消費文明を脱却する方向性でした。 私はかつて「ミツバチの羽音と地球の回転」という映画で日本の原子力発電の 現場と北欧の持続可能な社会のあり方を対比的に描きました。 今の文明は持続可能ではない、核心的な転換が必要なのだと北欧では 理解されています。だからゼロエネルギーハウスが開発され、再生可能エネルギーが求められている。その取材の過程で、私は太陽の回転がもたらす 地球上の森羅万象こそがエネルギーなのだと教えられました。 その土地、地域ごとの風土に応じて地球が回転することで生み出される 風や波、太陽が昇って沈んで行く角度、そこに存在する環境こそが私たちの住まいを支えるエネルギーの源となる。単に断熱するという表面的なことではなく、 どこか遠くで発電したエネルギーを大量に投入するのでもない、住まいの構造 そのものがもたらす、温かさ、涼しさ、必要最小限の持続可能なエネルギー、 それらのバランスが総合的に取れた時、私たちの住まいは持続可能になりうる。 環境を破壊するのではなく、環境や森羅万象を味方にし続ける建築。 井山先生が目指した太陽建築の根底にあるのはまさに、地球と宇宙のあり方に 沿うこと、自然の原理への畏敬の念なのです。 市場経済至上主義の社会では、消費し使い捨てるものでなければ利益を 産まない構造になっているけれど、それでは未来はないことを私たちは もう身をもって分かっています。 価値観の転換が必要とされる時代に、井山先生の建築哲学がこの遺稿を通じて 広がって行くことを願って止みません。
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別冊渡辺菊眞建築書 感涙の風景
¥3,030
建築家 渡辺菊眞が京都、奈良、高知、日本、そして世界を渉猟し撮影した、創作想像に大きなヒントをくれる風景建築写真集です。A4版、モノクロ、102ページ。82の風景を紹介しています。 【レビュー】 髙﨑正治氏(王立英国建築家協会名誉フェロー 建築家 髙﨑正治都市建築設計事務所) 建築家の視点から書かれた思いのこもった本がアトリエに届きました。拝読し、座右の本になりました。 竹山聖氏(建築家 京都大学名誉教授) 強く深い写真ですね。実は建築作品集だと思って本を開いたのですが、写真集だとわかり、しかもそれが原風景に届くような、眺めても眺めても尽きせぬ味わいのある写真の数々であることに驚嘆しました。いま故あって日本書紀や古事記を読み返していますが、どれも神話的風景に感じられます。「パウロ」という映画をたまたまテレビで見たので、黙示録的、とも思えます。目(レンズ)を介した深み、心の奥行き、のようなものが感じられます。